深刻な症状をもたらすことも

 ウェルニッケ脳症の名称は、西暦1800年代に脳症や失語症の研究で
世界的な権威として知られているドイツ出身の外科医で神経学者の
カール・ウェルニッケから由来しています。

病名の由来

当時は治療が困難でしたが、現代ではビタミン注射で治療が可能です。
ウェルニッケ脳症は急性神経機能障害、眼筋麻痺、失調、精神錯乱が
併発されるのが特徴で、コルサコフ症候群が合併症として見られることがあります。

体内のビタミンB1が不足することで運動失調であるコルサコフ症候群が起こり、
この時に記憶障害も併発することがあり、治療にはビタミン注射が有効です。

眼球運動障害が発症した場合には、目を外側に動かせずに
寄り目になってしまうケースもあるほどです。

運動失調が進行すると急激に自力での歩行が難しくなり、
手すりなどに掴まらなければ移動ができなくなるまでに至ります。

さらに進行すれば意識障害が起こり、昏睡状態になってしまう例もありました。

ウェルニッケ脳症が回復期に入るとそれまで動きにくかった目が
動くようになるのと同時に揺れるようになり、物が二重に見えてしまったり
眩暈に悩まされることもあります。

さらに精神状態によっては無気力になって何もしたくなくなったり、
うつ病を発症した事例もあります。

この段階に至る前にビタミン注射を施せば回復を早めることが可能です。

治療と予防でしっかり対応

当時は飢餓による栄養障害が多く見られましたが、現代ではアルコールの大量摂取や
偏食による栄養の偏りのほか、胃を切除する手術を行った後のビタミン摂取不良が考えられます。

また、かつては厚生労働省が妊婦に対する点滴にビタミンB1を加えることが
認められなかった時代があり、その際に食事が取れずに栄養障害から発症した事例がありました。

治療方法は早期の段階で、ビタミン注射を行うのが最も効果的とされています。
最初の数日間は1日1000mgを静脈にビタミン注射をして、その後は150mgを
内服薬などで補います。

不足の栄養を補給する

アルコール依存症を併発している場合は依存から回復させたり、
依存症が原因の末梢神経障害がある場合にはそれらを解消するための
リハビリテーションも行います。

軽症かつ早期の場合ならビタミン注射だけで十分完治が可能で、
可能な限り早期発見をすることが大切です。

発症を防ぐためには日頃から栄養のバランスの取れた食事を取り、
その中でもとりわけビタミンB1をしっかりと摂取することが大切です。

また、何らかの事情により食事が取れなかったり栄養障害が発症している場合には、
発症を防ぐ目的で体内に直接栄養を届けるビタミン注射をするのも有効な手段です。